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鉄欠乏④貧血は治ってもかくれ貧血は治らず!?食事改善と長期治療がカギ


注射投与も人によっては非常に効率のよい治療になります。治療期間が短縮できるし、私のように、鉄剤・サプリが合わない人もいるからね。

ただし、注射投与によるリスク管理に慣れている施設で、採血チェックもきちんと受けながら……ですよ!

注射投与

すでに重度の鉄欠乏があるなら、注射でないと追いつかないこともあるの。特に生理量の多い女性や、長期間栄養バランスが悪かった方ね。

目標は単なるヘモグロビンの正常化だけでなく、その後に続く貯蔵鉄フェリチンの回復!

これをクリアしない限り、かくれ貧血は治りません。

経口摂取で補充すると、フェリチンは少しずつ増えます。個人差はありますが、鉄が足りているとフェリチン値はだいたい100くらいです。

点滴で鉄を投与すると、いったんフェリチンがすごーく高値になることがあるけれど、 肝障害などの問題がなければ 、この高値は通常一過性で徐々に下がっていきます。 2~3カ月かけて組織に分散・定着すると、フェリチン値も安定し、きちんと貯蔵鉄量を反映します。

これは 一気に体内に鉄が増える、注射ならではの特徴なのね。

だから、注射によって鉄が十分に補充できたかな?と採血でフェリチン値のチェックをしたくても、最後の注射投与から2~3カ月空けないとできないんです……。


でも、そんなに待ってられない時もあるじゃない?
それに、鉄は過剰症の方が体に有害だから、注射し過ぎないようにしたい!


そこで、あらかじめHb値と体重から鉄の不足量を計算する式中尾の式)があります。つまり、ざっくりどれくらい鉄を入れればいいかは、Hbの初期値から推測できるわけ。

ただ、中尾の式は少し目標鉄量が高過ぎるし、また安易に一般の方が使うと誤用に繋がりかねないので、ココで詳しく書くのは控えます(この部分はドクターに任せましょう)。


一例だけ治療イメージをご紹介しますね!

【Hb値12、体重50㎏の方の場合】

Hbが低くなり始めているので、すでにフェリチンは空っぽに近い……体内鉄総量4000mgのうち25%がフェリチンなので、それだけで1000mgくらいの鉄欠乏があるはずです。

実際、中尾の式で計算すると、不足鉄量は1400mgくらい。

この不足を注射で補うとしたら、1回80mgの鉄注射投与を週2回やったとしても18回分、2ヵ月はかかる計算!

ちなみに経口摂取で治療した場合、100mg/月くらいの体内鉄増加が限界なので、1年以上内服の見込みになります💦


ねっ、意外と長くかかるでしょ!?


また、フェリチンだけが低いケースでは中尾の式は使えないけれど、だいたい80mgの鉄注射→フェリチン8上昇(注射直後ではなく安定値になったときの話ね!)に換算できます。

Hb初期値から不足量を計算したように、フェリチン初期値から投与予定量を設定しておくと安心ね。そこに体格差や、生理出血量を考慮して調整します。


注射投与での副作用・合併症はコチラ!

☑ 血管痛、血管炎 …①
 血管外に漏れた時の色素沈着  …②
☑ 肝酵素上昇  …③
☑ まれに悪心
など
☑ 入れ過ぎると鉄過剰症

①薬液が濃いので、血管に刺激が加わり痛みや炎症を起こすことがしばしばあります。

②鉄欠乏の方は血管壁自体が弱く、しばしば血管外に漏れます。漏れた量が多いと鉄分の色(茶褐色)がなかなか吸収されず、長期間うっすらと残ることがあります。

③肝臓は鉄の貯蔵庫なので、一気に倉庫の中がいっぱいになり、しばらく数値が上がることがあります。特に脂肪肝など、もともと肝機能が低下している人で出やすいです。


このように、注射で入れる時は経口摂取と比べて、注意すべきことが多くなります。

思わぬ症状にも柔軟に対応できるところで、安全な治療を受けるようにしてね!

鉄喪失を減らすことも大事

治療というと足すことばかり考えがちだけど、出血による鉄喪失が多いなら、それを治療するのがいちばん効果的なのね。

出血源になりやすいのは…

☑ 性器出血(筋腫・内膜症、過多月経)
☑ 消化管出血
(潰瘍、腫瘍)
☑ 尿路出血
(腫瘍、結石、感染症)


それぞれ婦人科、消化器内科、泌尿器科が専門になるので、精査と治療を受けましょう。便潜血(+)なら消化器科、尿潜血(+)なら泌尿器科です。

出血の原因に心当たりがないけれど、貧血症状があったり健診で貧血を指摘された……という場合は、まず内科へ。上に挙げた出血以外にも、血液の病気で貧血になっている場合もあるので、そこも含めて調べてもらいましょう。


鉄欠乏の治療って、食事から摂る鉄分だけでなく、他の栄養素の過不足、消化吸収力の違いや出血のコントロール、注射による治療ができるかできないか……いろいろな条件が影響します。

検査やお薬はドクターにおまかせするしかないけれど、自分でケアできていなかったポイントを同時に改善して、早く元気な体を取り戻してね!

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