三寒四温に天気予報が翻弄された週末、
『春雷』ー幻想と第六感ー April 07, 2014
冬のいでたちで花冷えの鎌倉山に向かう。
半分ほど散った花びらが吹きだまり、
道の両脇に桜色の絨毯がつづく。
脇道に逸れる。
いつか来た憶えのある細く歪んだ坂道を下ると、
アーチやくす玉のように塊った花が
物思うグレイの空に映えて、
濡れて濃くなったアスファルトと
幹の深い焦げ茶が呼応する。
雨に濡れる桜は、しっとりと風情がある。
雨脚が少しずつ強まる。
いつもこの時期混んでる雷亭に、
さっと入って雨宿り。
思いがけず春雷が鳴り響く中、
ストーブで暖をとりながら蕎麦をすする。
春の空は気まぐれだ。
食べ終わる頃には、またほのかに
明るい日差しが戻ってきていた。
さっきの雷は、蕎麦屋へのいざないか。
庭はしずくに濡れ、吐く息は白い。
暖まった体にまた少しやる気が戻って、
ふたたびその中を歩き始める。


晴れた空のもと鮮やかな色彩が躍る景色も素敵だけれど、あたしは雨に濡れてしっとりと深まる、色合いの繊細さに心動かされることの方が多いのです。
この時は、ポーランドから来た友人と鎌倉山に桜を観に行ったら、途中で雨に降られて寒いのなんのって。春の天気の気まぐれさを思い知り、寒さの中に映える桜の美しさにも開眼した一日。

そうだ、そろそろ今年の桜ドライブ計画しなくっちゃ!
2020年は埼玉県、2021年は山梨県を巡ったよ。

樹齢2000年と言われる、山梨県・実相寺境内の山高神代ザクラ。
ヤマトタケルノミコトが東征した際に植えたと言い伝えられており、最古・最大級の木として大正時代に国指定天然記念物第1号になった、エドヒガンザクラの古木だそうです。霊気をまとう、圧倒的な佇まい。

神代ザクラのみならず、周りの花々と山の競演も素晴らしかった。
少し走れば、桜で名高い日蓮宗・妙了寺。

そういえばこのところ、桜の幹や枝が桜色を帯びてきたと思わない? いつも開花のひと月ほど前に、色であっ!って気付くんだ。もうすぐ春なんだなって。
寒の戻りが少し緩んだ都内。
『明けゆく季節』ー世界ー March 19, 2016
車で真昼の九段坂を抜ける。
両手の桜の枝が、日の光で紅色を帯びている。
蕾の中で、桜色の花弁が時を待つ。
毎年この色を見つけると、
もう春だなぁってあたしは思う。
3.11の年、
明けない夜はない、
来ない春はないんだと気付いたのは、
1カ月ぶりにエンジンをかけ、東京に戻る途中。
小さな太陽のようなタンポポの群れを、
道端の日向に見つけた時だった。
こんな時でさえ、次の季節は訪れる。
草花の営みに気付く気持ちをもたらした、
春に感謝せずにいられなかった。
永く暗い、冬。
どれだけ長く寒く感じたとしても。
さぁもうすぐ、春本番。

季節折々の美しさを描く画家といえば♥