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人生の休日⑱ベルヴェデーレ宮殿と世紀末美術

Thu, 23 Jun 2011
1 世紀末美術の宝庫 ベルヴェデーレ上宮美術館
  2.1 グスタフ・クリムト
  2.2 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
  2.3 エゴン・シーレ
  2.4 セガンティーニ
2 猛暑のグロリエッテを目指して
3 黄色い両翼を広げるシェーンブルン宮殿
4 最終夜はフォルクスオーパー
  4.1 ハイナーのティータイム
  4.2 オペレッタ ”メリー・ウィドウ”


昨日きらきらとライトアップが綺麗だった、グラーベン通りのペスト記念柱の前に祭壇が作られている。6/23は聖体節だそうなので、そのせいなのかな?

今日はちょっと足を伸ばして、リンクの外へ。
ゆっくりおきて本日からの宿、カイザリン・エリーザベトに荷物だけ預け、その足でオペラ座前からリンクD線でベルヴェデーレ Belvedereへ向かう。

世紀末美術の宝庫
ベルヴェデーレ上宮美術館

ベルヴェデーレ宮殿上宮は美術館になっていて、世紀末美術の宝庫なの。

なかでも多くの観光客を集める「接吻」は、海外の画家ではじめて好きになったクリムトを、意識するきっかけとなった作品。それからいろいろ調べてて、世紀末美術が好きになったんだったなぁ。

グスタフ・クリムト

クリムト「接吻」1907-1908


クリムトって、人間のessentialな部分を本当によく理解しているんだよなぁ。顔や身体の表情は、それだけで内面や感情をリアルに伝える力を持っている。それを踏まえた上での、装飾的な表現やむしろ直感に近い処理が、一層訴える力を増幅する。

この「接吻」が置かれた部屋の周りの壁に、彼の作品の中では一際穏やかなものを集めているのも、学芸員の力を感じさせる展示の妙。泣きますそりゃもちろん。涙でないワケないよ、だって・・・。

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの何点かを直に目にできたのも嬉しい。
霧に消えゆかんとする大きな船と小さな舟。

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ「霧の舟」1907


キャンバスいっぱいに広がる自然の姿と対比した、鋭くも畏怖の念に満ちた小さな人の存在は、無力ではかないゆえに大切にしたい美しさを湛えている。
静かな筆致の中に、はるかに広がりゆく動の景色は、高い精神性と探求なしには描けない。

美術ファン@世界の名画 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(上記画像お借りしています)

エゴン・シーレ

シーレ もよかったな・・・

28歳で没するまでに残したとはにわかに信じがたい作品の数々・・・クリムトが目をかけるわけだ。ある意味クレイジーなヒトだけど、そうしてようやく見えるもの、生み出せるもの、って確かにあるから。

おみやげに買ったシーレの👓ケース✨

セガンティーニ

それに、セガンティーニ「悪しき母達」はとてつもなく衝撃的。印刷で見たことはあったけど、実物のキャンバスに残る密度の高い筆致、完成度の高さ。画面に流れる風、胸に喰らい付く赤子、いやおうなく訴えかけてくる ”堕胎” というテーマ。

当時の社会では、堕胎を犯した女性は死刑だったのだそうだ。

セガンティーニ「悪しき母たち」1894


あたしは世紀末美術としての作品しか知らなかったのだけれど、想像を超えた困窮の幼少期を経て、アルプスの風景画で世に知られるようになった画家。
いつくしまれることで育まれる想像力もあるけど、捨てられることで育つ想像力というのもある・・・セガンティーニや、ルドンのように。

ウィーンでひとつ見るなら美術史美術館といわれ、確かに良かった・・・けど、あたしはベルヴェデーレも捨てがたいな。

猛暑のグロリエッテを目指して

オペラ座に一度戻り、今度は地下鉄U4に乗り世界遺産・シェーンブルン宮殿へ。こんな移動も、小さなウィーンではたいして時間がかからない。

まずはガーデンから。ちょうどお昼時だから頑張ってグロリエッテ Glorietaまで歩いて、景色を堪能しながらカフェランチをしよっと。


いやでもね・・・気が狂いそうなくらい暑いのよ。
ガーデンは背の高い木々の散歩道になっていて、木陰を渡り歩きながらグロリエッテまでまだ1/3の池までたどり着く。はるか向こうに見えてきたのがローマ風の廃墟・・・

ホントに昔の貴族って酔狂だわ。宮殿内にこんな立派な遺跡めいたものまで作っちゃって。

ネプチューンの噴水


もう少し歩くと今度はグロリエッテまで1/2のネプチューンの泉。馬車が走ってたりして、ちょっと宮殿ぽい! でもドレスで着飾った貴族は、絶対こんなふうに自分で歩いたりしなかったんだろうな・・・。

ここからはさらに急坂をのぼってゆく。
(宮殿の横幅がおよそ1km、宮殿からグロリエッテまでがやはり1kmほど)

でも上るにつれ、徐々にその庭園の全景、宮殿うしろに広がる旧市街、その眺望は高さによって変化していく。


可愛らしい庭園の色合い。馬車がなんて似合う景色でしょう。
ひぃふぅ。。。ようやく。。。グロリエッテ近くまで!!

グロリエッテ


もう耐えられません・・・日陰に入りたい・・・とグロリエッテ内のカフェへ避難。
でもヨーロッパ、あんまり冷房ないんだよねー。ここも熱気が淀んでる。

とりあえず、暑い時にはアイスカフェー😆
そしてプロバンス風サラダを、待てども待てども・・・来ない。

ねぇちょっとウェイターのおじさん、いつになったら出てくるの?
催促したら一瞬で出てきた。オーダー忘れられてた? 挙句にごめんね、と子供だましにちっちゃなチョコが1枚。

おじさんの態度があんまりよくなくてかなり腹がたってたんだけど、周りを見てみると暑くて広い店内、お昼のピークを迎えてるのに、たった一人でウェイターをしているみたい。オーダーとって、お皿出して、ドイツ語話せない外国人客の相手して、席で会計して、入り口付近のアイスの販売まで。
厨房側には何人もいるのになんで?

・・・・・。
なんか、不憫だから文句いうのやめよっと😔

体の中からすっかりクールダウン、意気揚々とグロリエッテの塔に登る。上からは旧市街が一望。シュテファンも見える!


ヴェルサイユの庭も素敵だったけど、こんなふうに街を望む丘っていうのもまた格別。
いいもの見たな✨

坂を下る帰りは快調。さっきとは違うルートで散策しながら宮殿へ。

園内の鳩舎では変わった種類の鳩を飼育


あっ、よく考えてみりゃ、まだこれから宮殿内ののグランドツアーがあるんだった!!

黄色い両翼を広げるシェーンブルン宮殿


ハプスブルグ家の夏の離宮、シェーンブルン宮殿 Schloss Schönbrunn の外観はテレジアン・イエロー。

ベルサイユを凌ぐ宮殿を目指し金を貼ろうとしたところ、財政難で中断されていた工事を再開したマリア・テレジアがこの色を塗ることで差し替えたためといわれるけれど、そのおかげでより一層、この宮殿の優美さは協調されているみたい。グロリエッテから見た、ウィーン旧市街の街並みとも相性抜群。

絢爛さや派手さではヴェルサイユに軍配があがるけど、シェーンブルンの魅力はその品の良さ。
部屋はたくさんあり、共通しているのはロココ風の金の縁にかこまれた絵画やファブリック、漆が装飾となっていること。これにより、多彩な素材や色を使っているにもかかわらず、宮殿全体としてまとまりのある統一感が生まれている。

シェーンブルン宮殿 Ralf Roletschek


子供たちを政略結婚に次々と送り出したマリア・テレジアの人となりは、今となっては想像に任せるしかないけれど、思ったよりも子供たちの家庭的な肖像画が多かったのが印象的。でも夫と(死後は生涯喪服で過ごしている)子供を愛せなかったら、16人も産めないよなぁ。

シェーンブルン宮殿 Schloss Schönbrunn
婚姻政策によってヨーロッパに君臨したハプスブルク家が、ヴェルサイユ宮殿を凌駕しようとして計画した夏の離宮。もともとこの地にあったシェーナー(美しい)ブルネン(泉)が宮殿の名の語源。17世紀末、レオポルト1世がバロック建築の巨匠フィッシャー・フォン・エルラッハに命じ建設を開始するも、最初の計画は壮大過ぎて縮小され、さらに第2案も資金難で中断。孫の女帝マリア・テレジアによって1750年に完成に至り、外装はバロック、内装はロココ様式で統一され、両翼合わせて約180mの現在の優美な姿に。

6歳のモーツァルトが演奏をした鏡の間、高価な紫檀をふんだんに使った百万の間、東洋趣味を取り入れた漆の間など、現在もオリジナルの状態で保存される贅を尽くした部屋が全1441室ある。観光客に開放されている2階よりも上層は、ウィーンの住宅難を緩和するため賃貸住宅となっているが、案外不便で安価にもかかわらずさほど人気がないそう。

最終夜はフォルクス・オーパー

ホテルに戻ると、朝顔を合わせたスタッフが、顔パスですぐにキーを準備。ポーターのおじさまも品のある対応。極上の笑顔とちょっとしたウィットを含んだ2~3言の会話が、まるでエリーザベトをもてなすかのよう。

もしかしてあたし、今日だけお姫様?👸✨ ←こういう勘違いも時に必要😆

Hotel Kaiserin Elisabeth


さぁ、さっそくオペレッタ仕様に着替えなくっちゃ!!

あれこれ試してコレに決定♪

ハイナーでティータイム

そして皇室御用達ハイナーで、お出かけ前のケーキで夕食代わりの一休み♡

一杯のお水はアルプス天然水を持つオーストリア風のサービスだそうで。甘いもののチェイサーかと思いきや、もしかして中華と同じで指を洗うものとかだったらどうしよう、なんて全部杞憂だった。

キッチュな色彩感がお上品なブルーと相俟って絶妙


でも甘い。やっぱりウィーンのお菓子は甘過ぎる。

むかしの貴族たちにとっても、さぞかし身体に悪かったろうに・・・。
鮨といい、絶妙な風味と甘さのスィーツといい、日本の食べ物の素晴らしさをはるか遠く想う。

オペレッタ ”メリー・ウィドウ”

オペラなんて全然興味もったことなかったんだけど、最近一条ゆかりの「プライド」をさんざ読みまくって、”フォルクス・オーパー” だの ”薔薇の騎士” だのが頭に焼きついてたんだよねー。

言葉がわからなくても「こうもり」や「メリー・ウィドウ」は楽しめるとの評判。なら観ない手はない!と、メリー・ウィドウがある今夜のオペレッタ(オペラより笑いが多い)で、ウィーン最後の夜を楽しもうってチケットをとっておいたんだ♪

開演前のフォルクス・オーパー


地下鉄を乗り継いでフォルクス・オーパー Volksoperへ。雨がザーザー。もみくちゃの入り口でなんとか予約済みチケットを交換し、手荷物を預ける。
いやもう・・・なんか日本の、花火大会の混雑みたい。

案内の人にパンフをもらう。一生懸命英語の読んで予習・・・
したら最後のページに日本語ダイジェストが💦


さぁ始まった。

オペレッタ=喜歌劇と訳されるとおり、意味のわからないドイツ語ながら、コミカルで表現力あふれる演技に思わず笑ってしまう。周りの人々は爆笑続き😆😆😆✨

見せ場では絹のように滑らかな、天上の声。感情細やかに歌い上げる、恋のやりとりに胸が熱くなる。
言葉がまったくわからないのに音楽ってすごいな。オーケストラも場をコントロールするのが本当に上手で、流れた瞬間に心をさらわれてしまう。


最高の夜だった。
見た目も美しく、しぐさや間合いひとつで情感を表現する主役の二人に加え、各所で絶賛されている脇役のMeyerさんは、ベテランならではの影の主役。笑いの大部分を彼がさらっていた。

ドキドキして、舞台に吸い込まれて、翌年日本公演がある・・・ことを知り、また観る!!とひそかに心に決めた。

Meyerさんサイコー!!


土砂降りの中、熱気を冷ましながらVolksoperをあとにする。



余韻に浸りつつカイザリンの部屋に戻り、ケーキだけじゃ小腹減って、お湯でわさび茶漬け食べようと思ったら、ここでもお湯はないって言われちゃった💦

ティーパックのお茶とか、ヨーロッパの人は使わないのかなぁ。
かわりに大きなバスタブに桜のバスソルトで贅沢なお風呂タイム。


じんと心に焼き付く、最後の夜・・・。


☑レスキューアイテム
旅行中おなかを壊したり、食欲なくなったり、味が合わなかったりした時用に、いつもインスタント和食を1~2回分持っていきます。アルファ米のわさび茶漬け、ふかひれスープ、味噌汁など。水でも戻せるモノを愛用してるんですが、今回は震災で被災地に送られ欠品中。でもお湯がないホテルが多くって😰💦 ま、食事が結構おいしくて、どうしても必要という場面はなく助かったな~。

あとやっぱ・・・お茶が飲みたくなる! この時はまってたのが「かっぱずし」の「かっぱ茶(粉の玄米緑茶)」で、これはお水に溶いて旅の間1パック/週消費。便利なのはのど飴系。現地では甘いし手に入れにくいし、乾燥で敏感になっている喉や風邪の引き始めを救ってくれます。荷物軽くするため、すべて乾燥食品ね。

薬は、日焼け対策のトラネキサム酸(肝斑薬)やビタミンC抗生剤は組織移行性がよくワイドスペクトラムかつ1日1回内服でOKのクラビット、痛み止め、胃もたれ時の胃壁保護剤、バンドエイドやマメ防止用品、じんましんや虫刺され時のステロイド軟膏。場所やスケジュールによっては、虫よけスプレーや乗り物の酔い止めも持って行きます♡

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