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  1. MEDICAL

鉄欠乏③診断のポイントと鉄の吸収・排泄

体内鉄量のコントロール

そもそも鉄分は、どのように体の中に取り込まれるんでしょう?


鉄は、消化管からFe2+のかたちで吸収されます。

植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄は、胃酸でイオン化(Fe3+)されたのちビタミンC等で還元され、Fe2+の形で主に十二指腸から吸収されます。

一方、動物性食品に多く含まれるポルフィリンの結合したヘム鉄は、イオン化(Fe2+)されやすく、そのまま吸収されやすいのね。


ヘム鉄で10~20%、非ヘム鉄で1~6%の吸収率。ただし、消化吸収能力は個体条件によってかなり違います。とりあえず、ヘム鉄の方が数倍~10倍くらい吸収がよい、とだけ覚えておきましょう。



さて、実は腸には、必要以上の鉄が体内に入ってしまわないように過剰防止システムもあります。


腸上皮には貯蔵鉄フェリチンの形で鉄が結合していて、これがそこにある間は、それ以上の鉄が吸収されにくくなるの。

椅子取りゲームの椅子が、いっぱいになってる状態ね! 椅子に座れないと、体内にも入れないわけ。満席の時は、鉄は消化管内をスルーしていきます。

生理出血や新陳代謝で少しずつ体内の鉄が減ってくると、この腸上皮にあるフェリチンはそれを補うように使われていくので、この椅子に空席が出ます。
この時に、腸管内をウロウロしている鉄が新たに取り込まれていくのね!

※鉄を極めて多く摂取したり、肝機能が悪い場合は、鉄過剰になってしまうこともあります。

一日にどれくらい摂ればいい?のワナ

一日の鉄喪失量は男性で1mg、女性で2mg、妊婦さんで3mgくらい。フェリチンを含む腸上皮が代謝で脱落し便とともに排出されたり、生理出血で失ったり、赤ちゃんに移行したりするためです。

鉄の体内吸収率は、ヘム鉄のように吸収率が高くても摂取量の1割程度なので、男性10mg~女性20mg/日くらいが”現状維持”のための摂取目安になります。

非ヘム鉄ならその数倍必要💦


でもこれは、あくまで毎日の喪失を補う”現状維持”の目安。既に鉄欠乏があって増やさないといけない人は、これ以上のペースで摂取が必要なんです!
(ただし、単に量を多くすればいいってものでもない。これはまた後日)

でも結局どれだけ体内に取り込まれるかは、 消化吸収率や個体条件によってかなり違って、正直簡単には計算できないのね。

つまり、

☑ 腸上皮のフェリチン空席
☑ 鉄を含む食べ物の消化吸収力

最大吸収量は、自動的にソレで決まっちゃうってこと。
治療を考える上で、ココはすご~く大事!

より怖いのは「鉄過剰症」

でもね、ひとつ気を付けて欲しいことがあるんです!
実は、体内の鉄が増え過ぎた時は、それを積極的に排泄するシステムはないの。

だから、点滴や輸血で体に入る鉄分が必要量を超えたり、鉄を貯蔵する臓器・肝臓の機能が低下すると、鉄過剰症が起こり得るのね。


女性の場合は、食事や鉄剤・サプリとして経口摂取する分にはあまり心配ないのですが、

男性でビールなどのアルコールが好きな方、糖質過多・高カロリーでメタボ傾向の方は、脂肪肝があるので要注意! 赤身肉やレバーを好んで食べる男性も、鉄の過剰摂取になりやすいです。


体内にある鉄は基本的に輸送蛋白と結合していて、トランスフェリンのかたちで血中を移動したり、フェリチンとして貯蔵されたりすることで、体内で安全に活用できるんです。

でも多過ぎる鉄は、これらの蛋白質と結合できずに自由鉄(フリーイオン)となって、活性酸素を産生して各種臓器障害の原因になります。


鉄欠乏より鉄過剰の方がダイレクトに有害なので、男性で鉄欠乏症状がみられる場合、 男女問わず鉄剤注射をする場合、脂肪肝など肝機能の低下がある方は、 鉄欠乏に詳しい予防医療のクリニック等で、採血結果を確認しながらの治療がオススメですよ!

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