North, South, East and West ーあたまの中を旅しよう。

  1. SEASIDE

3度目のスペイン②1日しかないなら迷わずトレドへ

Sun, 10 Sep 2023
1 プラドを超速つまみ食い
2 トラップ満載のアトーチャ駅
3 中世の城壁都市トレド
  3.1 旧市街を散策
  3.2 サント・トメ教会
  3.3 ロス・ヘスイタス教会
  3.4 サンタ・マリア・ラ・ブランカ教会
  3.5 サン・フアン・デ・ロス・レイエス教会
4 いざ絶景のミラドールへ
  4.1 旧市街を眺めるErmitaで舌鼓
5 千夜一夜のアラビアン体験
6 夜のトレドを周るSightseeing Bus

これは一部(笑)

まずはゆっくり、グリーンのお部屋で好きなだけ頂くヴィンチの朝食♪ 本場の搾りたてオレンジジュースと、他愛ないペストリーが抜群の美味しさだよ~♡

表はたくさんの人が走ってる!マラソン大会らしい


マドリードを出発する前に、ヴェラスケス、ゴヤ、エル・グレコの三大巨匠の作品が収蔵されているプラド美術館 Museo Nacional del Pradoに寄ろうと思ってね。
ホテルからおよそ1㎞、多少凸凹ある道をガラゴロしながら、気持ちのいい大通りを歩いてく。

プラドを超速つまみ食い

予約者入口は北側のヘロニムス門。朝一のチケットは人気が高いから、少し前に買っておいたんだ!

北側の予約者専用入口


世界3大美術館でもあるプラドは、じっくりで3hr、駆け足で2hrって言われてる。そこを1hrちょっとで美味しくつまみ食いしようっていうんだから、いい根性してるあたしたち😆

スーツケースを預り所(かなり大きい)にあずけて、早速見学開始!

パンフの展示室入り必見40点は予習済み


はじめてのスペインで訪れた時はリベラの写実に感動したものだけど、今はボッスやゴヤに、よりインスピレーションをもらいたくなるのが不思議。見逃せないのはシニカルなユーモアをにじませるボッス「7つの大罪」「快楽の園」、ブリューゲル「死の勝利」、生命力と背中合わせの狂気を感じさせるゴヤ黒い絵シリーズ。ヴェラスケス「ラス・メニーナス」、好きではないけどココならではのエル・グレコの作品群。

それにスペインの肖像画は秀逸なものが多くて、肖像画家として名を馳せたヴェラスケスをはじめ、王侯貴族や画家自身の肖像が、数珠つなぎの部屋を速足で通りながらでも目を楽しませてくれる!

は~駆け足だったけど、結構おなか一杯だわ😋 そろそろスーツケース受け取って、さらに1㎞先のアトーチャ駅へ向かわなくっちゃ。

トラップ満載のアトーチャ駅

でもこの駅大き過ぎて、ホンットによく分かんないの!(分かりにくさ加減は東京駅に似てる)
隣に近郊線駅アトーチャ・セルカニアス駅、レンフェ直結地下鉄駅エスタシオン・デル・アルテ駅ってのもある。

それでも手前の、地下鉄に向かうスロープはたぶん違うって気付いてクリアしたんだけど、次が難関だった。どっちもアトーチャって書いてあるから、どっち入っていいか分かんないよ~💦


この SALIDA ってつづりを見つけちゃったのがまずかった。うろ覚えでこれ確か出口って意味じゃん? ってことはココから入っちゃ駄目なんだよね?? って、向かいの茶色い円形のセルカニアスに入ってしまった。 あとから調べたら、SALIDAS「出発」なんだって😔


今歩いてきた道はアトーチャ駅の裏手になり、最初に下へと枝分かれするスロープが地下鉄エスタシオン・デル・アルテ駅、地上の道路をそのまま歩いていくと、今度は建物が2つ見えて手前側がAVEやAVANTが出発するアトーチャ駅、向こう側が間違って入っちゃった近郊線のアトーチャ・セルカニアス駅

係員ぽい人にチケットを見せると「ここじゃない(スペイン語)」らしき返事。次々訊き繋ぎ、地下階?らしきところろをやたら長く移動して、巨大なエスカーも乗り降り💦
そしてようやく、AVE/AVANT乗車前の荷物検査場へ。あぁ、アトーチャ駅には十分余裕を持って行くべし・・・。

ようやく出発ホーム前まで来た~!

チケットのQRコードをピッてされて、やっと出発ホームに入れてもらえる。

アトーチャ駅 Puerta de Atocha-Almudena 12:20発 AVANT

トレド駅 Toledo 12:55着

もうひとつのトラップは「軽犯罪」
スペインではとにかく軽犯罪が多いので注意!!してはいたつもりでした。特にレストラン、空港、駅、地下鉄内、ツーリストの多い場所は狙われやすい。

あたしは荷物が多くて頻繁に出し入れもするので、蓋なしショルダーの口を右脇でがっちり挟んで持ち歩くスタイルなんですが、アトーチャに向かっていた際、スーツケースで手が塞がった状態で、駅の入口が分からずスマホで地図を見ながら焦って歩いていました。なんか右肩のかごバッグが重い・・・と振り返ったら、サングラスのおばさんがしっかりかごバッグに手をねじ込んでる!!
睨み付けたらサッと手を抜いて「あらっ間違えたわ~」みたいなことを口走り両手のひらをヒラヒラ見せて逃げて行った。

乗車時間が迫ってて財布やパスポートが無事なことを確認してそのまま駅に向かったけど、こんな感じでやられるんだね…。お財布・スマホ・バッグなど体から離さない、常に気を抜かない、ニコニコ親しげに話しかけられた時ほど気を許さない(他の仲間にスられる)のを徹底しなくっちゃ、と思いました💦

中世の城壁都市トレド

窓に流れる乾いた大地とちょろちょろ生えているオリーブ色の木々を眺めながら、はじめて訪れるトレドを想う。

街全体が博物館ともいわれる古都トレドは、現在カスティーリャ・ラ・マンチャ州の州都として、国内外から多くの観光客を集めている。6~8世紀まで西ゴート王国の首都だった城壁都市。3方をタホ川に囲まれた岩山に築かれた天然の要塞になっており、中世にはイスラム・キリスト・ユダヤの3つの宗教文化が融合した。1561年にフェリペ2世が首都をマドリードに移して以降は、「歩みを止めた町」の姿を残している。

古都トレドとカトリックVSイスラム
紀元前1000年くらいから、イベリア半島はイベリア人・地中海に都市国家を建てたフェニキア人・ガリアからピレネー山脈を越えてきたケルト人・ギリシア人など多くの人々が交流していたが、紀元前3世紀末からローマの支配下になり、作物の栽培やキリスト教などが広まった。

4世紀にドナウ川を越えた西ゴート族はそのまま南下(ゲルマン民族大移動)し、現在の南仏のトゥールーズを首都に西ゴート王国を建国、更にイベリア半島に侵入し560年トレドに遷都。勢力を広げつつあったイスラム帝国ウマイヤ朝に属州化される711年まで、トレドは西ゴート王国の首都だった。

間もなく、西ゴート族によるレコンキスタ(国土回復運動)が始まり、11世紀にカスティーリャ王国がトレドを奪還する。勢いを増したポルトガル・カスティーリャ・アラゴンといったカトリック王国勢は、イスラム勢力内の分裂に乗じ、1492年グラナダを陥落させレコンキスタが完了。勢力争いと同時に文化面では交流が進み、トレドではアラビア語文献がラテン語に翻訳されるなどして、イスラム文化がヨーロッパに伝わるきっかけをつくった。


たった30分ほどで到着! 乗るまでの方がはるかに大変だったな・・・。

トレド駅舎は旧切符売り場やアラビアン・モザイク、アーチ型窓のステンドグラスなどなど、スペインでも一二を争う美しい駅って言われてる。

イスラム教とキリスト教の建築が融合したムデハル様式


今日の宿は坂の上の旧市街の中にあり、タクシーじゃ入れないのかな?って思って、観光バスと住んでいる人たちが使うエスカレータ+徒歩でたどり着こうと考えてたのね。でも凸凹の激しい旧市街をこの暑さの中スーツケース引いていくのは厳しいのではと、素直にタクってみることに。

そしたら運転手さん「行けるよ」と、狭くてややこしい旧市街の道をくぐり抜け、あっけなくホテルの真ん前に✨ すご~~い!!

それを可能にしているのが、この車止めポール! 大通りから狭い旧市街の道に入る所にあって、信号が変わったら自動で?運転手さんが操作して?✨ポールがひとりでに地中に引っ込んで車が通れる✨ようになるの!

ひとりでに動くポール(語弊があるが…)


世界遺産の狭い旧市街を傷付けずに、安全に走行できる運転手さんだけが入れるシステムなのかも。中世とハイテクの共存を予想外のところで目の当たりにした気分・・・

そのほかToledo City Sightseeingという赤い大きな観光バスが、35~40分刻みで50分かけて10個の停留所を周ってる。これにトレド駅から乗れば、まずタホ川(テージョ川)の外周をぐるりと時計回りに走り、景色のよいミラドールサン・マルティン橋を経由し、最後に旧市街内のソコドベール広場まで連れて行ってくれる。
駅から直接ソコドベール広場までしか行かない、赤い小さなバスもあるみたい。

たった直径1㎞内に見どころいっぱい

旧市街を散策

ホテルにスーツケースだけ預かってもらい、さっそく旧市街散策へ。


旧市街はどこもかしこも道が細く、時を経た赤い壁に反射して薔薇色のシェードをかけたよう。そこに落ちる建物の陰が、強い日差しから守ってくれているみたい。
そこかしこに、中世から脈々と続く祈りの片鱗が生きている。


何はともあれ、まずサント・トメ教会! ツーリスト・ブレスもそこで買おうかな?

プルセーラ・トゥリスティカ Pulsera Turistica
下記7つ見学できるQRコード入りの赤いブレスで、Webか初めに入場する施設で購入すると手首に取り付けてくれる。個別だと1施設2.5~4ユーロ、おおむね10:00-18:30くらいまで開いていて、4施設以上周るなら12€のブレスを買う方が便利でお得。
今回は1時間半で5カ所周ったよ!(回教寺院行けなかったけど…😔)

サント・トメ教会 Iglesia de Santo Tomé エル・グレコ「オルガス伯爵の埋葬」所蔵
ロス・ヘスイタス教会サン・イデルフォンソIglesia de los Jesuitas(San Idelfonso) バロック様式、階段上るとトレド旧市街を一望
サルバドール(救世主)教会 Iglesia del Salvador イスラム寺院がキリスト教会に
サンタ・マリア・ラ・ブランカ教会 Sinagoga de Santa María La Blanca イスラム様式の白いユダヤ教会
サン・フアン・デ・ロス・レイエス教会 San Juan de los Reyes 丸天井の星型リブ回廊の美しい天井
クリスト・デ・ラ・ルス(回教寺院)Cristo de la Luz トレドで最も古い999年建設時の姿を保ち、メスキータを連想させるアーチ装飾がある
レアル・コレヒオ・デ・ドンセージャス・ノブレス Real Colegio Doncellas Nobles フェリペ2世王とトレド大司教後援の若い女性の教育施設

サント・トメ教会

特別室にあるエル・グレコ(=”ギリシャ人”の意)の「オルガス伯の埋葬」で有名なサント・トメ。荒れていたこの教会を私財を投じて再建した、敬虔な信者で騎士でもあったトレド出身のオルガス首長ドン・ゴンサロ・ルイスが、1312年に死去したときの伝説を題材としている。

エル・グレコ「オルガス伯の埋葬」


煌びやかな衣を纏った聖ステファノと聖アウグスティヌスが天から降臨し、自らの手でルイスを埋葬したといわれる場面。取り外しができず、門外不出なのだそうだ。

顔や鼻梁がシュッと細くてあごが尖ってるのは、スペイン人の特徴。でもひとりひとりの顔の個性が実によく描き分けられていて、それもそのはず、絵の制作当時に実在した名士たちが、絵の中で一同に会する肖像群にもなっているんだって😲

こちらを見ている左から3番目の男性がエル・グレコらしい


色が独特でぐねぐねした線のグレコの絵って苦手というか、うぅんと正直キライ😆なんだけど・・・
これが紛れもない傑作ってことだけは、否が応にも認めないワケにいかないよね~。

いや、素晴らしいです!! 見飽きることがない。。。

オリエンタルな雰囲気満載

絵の特別室があって影が薄れがちだけれど、教会内部も小ぶりながら華麗。こちらも様々な要素が絡み合って、見飽きぬ美しさです。

ちなみに、この教会にあるモサラベの塔は、トレドで最も美しいムデハル様式の建造物!と名高いのだそう。ムデハル様式はスペインとポルトガルで発展したもので、イスラム建築とキリスト教建築が融合したつくりね。あっ、撮り損ねた💦

ロス・ヘスイタス教会

少し歩いて、ロス・ヘスイタス教会(サン・イデルフォンソ) Iglesia de los Jesuitas(San Idelfonso)へ。空間を大きく見せドラマティカルな装飾を施すバロック様式。表側のファサードも見ごたえがある。

ピュアな白と落ち着いた茶で構成される大空間


階段を上っていくと、眼下にトレド旧市街が・・・
右はトレド大聖堂、左はアルカサル。タイムトリップしたみたい✨

サンタ・マリア・ラ・ブランカ教会

Sinagoga de Santa María La Blanca、”シナゴーグ” はユダヤ教の礼拝所兼学校のこと。イスラム支配下に建てられたモスクを、レコンキスタ後にユダヤ教教会に変えたんだね。


内部は白い漆喰で覆われていて、ムスリムの礼拝に適した広く平らな床や、ムデハル様式の装飾、白い優雅なまるみを描く鍵穴のような馬蹄形アーチが整然と並ぶ。アーチの基部に付けられた渦状の装飾は熱帯の植物? 南部からイベリアを北上してきた、イスラムらしさが伝わって来る。


こんなに白く美しい礼拝所だが、その歴史には、ユダヤの人々の苦難と流浪も隠されていて・・・

トレド奪還後、キリスト教王の下でユダヤ・キリスト・イスラムの各教徒が共存していたが、15世紀はじめに説教師に扇動され暴徒化したキリスト教徒が、シナゴーグでユダヤ人を殺すという事件が起きた。

ユダヤ人たちはトレドを去り、シナゴーグはキリスト教会「白い聖母マリアの聖堂」に。のちにユダヤ人はトレドに戻るものの、 グラナダ陥落しレコンキスタが完了した1492年にはユダヤ人追放令が発せられ、再度流浪の民となる。

このシナゴーグは、現在モニュメントとしてここに残されている。
宗教は人を救いもするが、殺しもする。
歴史をすべて振り返った時、そのどちらに、天秤は傾いているのだろう?


もし1日しかスペインにいられないのなら、迷わずトレドに行け

そういわれる意味が、こうして赤い迷路をさまようだけでよく分かるね。
教会から教会の短い間さえも、中世の時の流れに迷い込んだようで。

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