- Thu, 14 Sep 2023 -
1 完成に近づくサグラダ・ファミリア
1.1 虹色のバシリカ
1.2 受難の塔を昇る
1.3 自然への畏敬
1.4 西のファサード《受難》
1.5 東のファサード《生誕》
2 ガウディ通りの Arrosseria Gaudi
2.1 Gaudeixにも立ち寄る
3 まばゆい昼のカタルーニャ音楽堂
4 ユルバーンの屋上から
5 スペイン旅の最終夜
完成に近づくサグラダ・ファミリア
サグラダ・ファミリア Sagrada Família はカトリック教会のバシリカ(聖家族贖罪教会)。彫刻による人物像やシンボルの連なりでキリストの生涯を雄弁に語る外観や、自然界のかたちと相対するかのような抽象を併せて構成した大胆で巨大な建造物は、現在進行形で成長するカタロニア・モダニズム建築の傑作として世界中から訪れる人が絶えない。
この8年でその ”異形” はさらに完成形に近づき、たずさわる人たちの祈りとも執念とも言える情熱が伝わって来る! 白い部分は近年新しく建てられたところ、古くに建てられた部分は修復も平行して行われている。
民間のサン・ホセ教会が依頼し1882年に初代建築家フランシスコ・ビリャールによって着工されるも、意向が合わず翌年まだ無名だったアントニ・ガウディ Antoni Gaudí に引き継がれ、彼は1926年に亡くなるまでライフワークとしてこの建設に取り組んだ。
ガウディは、教会は貧しい人たちのためのものでなくてはならない、たとえ文字の聖書が読めずとも教会そのものを ”石の聖書” にしてもらえれば・・・と考えたのだそう。
ちなみに、世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」として認められているのは、生前のガウディが実現した地下聖堂と生誕のファサードなど全体の1/4未満のみ。
ファサードは3つ(東の《生誕》、西の《受難》、南の《栄光》を表すメインファサード)、塔は18本(イエス、聖母マリア、福音書記者4人、使徒12人)、そして聖堂としては珍しく森をイメージした内部となっている。イエスの塔まで完成すると、世界一高い172.5mのカトリック教会になる予定だとか。
サグラダ・ファミリアが上位教会 ”バシリカ” になったのは、2010年に行われた聖別ミサのとき。神父や司教6500人が参列し、800人の聖歌隊による歌声が響き渡る中、法王がこの大聖堂に聖水を注いだ。
人の往来が制限されるコロナ禍の真っ只中、2021年末に暗鬱な世界を再び照らすかのように、完成したマリアの塔が夜空に輝いたのを想い出すなぁ。。。頂きに冠するのは、イエス生誕直後に輝いたという「ベツレヘムの星」。←鋼鉄とガラス製で5.5トン!
現在は、栄光のファサードといくつかの塔が未完。資金はすべて喜捨(寄付)により、観光収入が増えたことでガウディ没後100年の2026年に完成予定で順調に工事が進んでいたが、新型コロナの影響で今は遅延が予想されている。アフターコロナで観光熱が再燃したことで、今後どのように進行するのかな。
虹色のバシリカ
9:30入場。ステンドグラスの光が降り注ぐ、朝のバシリカ・・・
問答無用、誰しもが虹に包まれる世界に夢中になってしまう! あちこちで色彩の妖精がダンスを踊るかのようです。
こんな聖堂、ここ以外に見たことない。
ひとしきり感動と興奮を味わったら、まずは塔に昇るエレベータへ。
受難の塔を昇る
エレベータ入口では一旦荷物をロッカーに預け、かなり厳密に入場をコントロールされる。前来た時はこんなのなかった気がするな~。
今回昇るのは「受難側の塔」。以前は人気いまいちだったこちらの方が、今はカラフルで変化に富んだ景観が見られるのでオススメみたい😊 生誕の塔はけっこう古く、壁に世界各国の落書きがあってそれが残念だった憶えが(-_-;)
おぉ!! さすが爽快な眺め・・・。
直線的な幾何模様の福音史家の塔ができて、全体的にモダンな印象が強くなったね。
工事中の様子がとても新鮮。色も鮮やか! 豊穣を表す季節の農作物を、このモチーフにしているんだって。
外尾悦郎さん、どこかにいないかなぁ~😍
塔の中は、こんな風に螺旋階段を周りながら外を眺められるように窓が並んでいます✨
受難のファサードの裏側。スクリューの打ち方やコンピュータを駆使した石の切り出しのかたち、下からは見えない彫刻の細部などがよく見えます。地震のない地域だからこそ造れる建造物だよね。
ファサードもそうだけど、どこか丸みやクラシカルさを残す生誕側と比べると、直線の多い受難側は現代的でクールなイメージ。
ガウディ没後100年の2026年には、この172.5mのイエスの塔を完成させることを目標にしているのだそう。
自然への畏敬
塔を降りて再び身廊へ。虹色に輝いていた朝の光は落ち着き、観光客はさらに増えている。森をイメージしたというこの景色は、どうしてもナウシカの「腐海」を想い出しちゃうな。あの映画も自然界への畏怖や自浄力にフォーカスしていたよね。
柱1本1本は、セロリがモチーフ・・・?
色がモザイク状なのは、いろんな色の石を使っているからなのだそう。
ガウディはすべて石で作ることを想定していたかもしれないけれど、近年は残念ながら予算や建築のピッチを上げる関係で、鉄筋コンクリート(外から見える塔の部分かな?)も使っているという話。
もともと建築に300年想定していたんだから、完成を急がず ”作り続ける” のがいいのにね、ってあたしは思うんだけどなぁ。(ガウディもそう言ってたし)
自然界に存在する形態に美と機能の両者に通ずる答えを見出していたガウディは、皆がいつかどこかで見たことのある形から発想を得て、アナログの模型を使った実験で大聖堂の構造を検討した。そうした形を初めて建造物に取り入れたからこそ、斬新で驚きに満ちた造形でありながら、その前や中に立った時どこか安心感や懐かしさを覚えるのだろう。
西のファサード《受難》
彼の死後に起きたスペイン内戦では、彼や弟子が作成した設計図などの資料のほとんどが散逸してしまい、現在はわずかに残された資料からガウディの意図を汲み、推測に基いて建築が続けられている。
ガウディが直接制作に関わった《Nativity 生誕》のファサードと比べ、《Passion 受難》側は残された乏しい資料からガウディの想像を推し量り、これだけ広い空間を表現していかなくてはならなかった。どれほどの重責が、バルセロナ出身の現代彫刻家スビラックスにのしかかったことだろう。
浮き出た肋骨のように張り出す直線的で硬い受難のファサード。温かく芳醇な、喜びに満ちた生誕のファサードと180度異なり、吹雪に凍てつく岩山のように、あまりに冷たく厳しい面立ちで聳え立つ。
左下から右上へとS字に、最後の晩餐~磔刑~埋葬と、イエスの受難が石で描かれる。弟子であったスビラックスは、直線的なガウディのスケッチを元に、独自の作風でこのファサードを作り上げたんだそう。
「受難のファサードは硬く、冷たく」「聖堂はその精神を受け継ぐ幾世代の人々と共に生き、形を取っていくのだ」との言葉をガウディは残していて、後世の人々にこの聖堂を託すこの意志を汲み取り、スビラックスがいかに忠実に仕事をこなしていったかが伝わって来る。
なんだろうなぁ。前にここを訪れた際は、あたしはこの門を受け入れられず、生誕のファサードばかり観て終わったんだ。
けれど8年の時が経ち今ここに立つと、スビラックスの困難に立ち向かう強靭さ、ガウディの想いに対する心からのオマージュと、残した言葉へのぶれることのない忠実な追随を感じ取り、自然と足が止まり涙が沸いてくるようになっていた。
東のファサード《生誕》
長きにわたる建設事業が人々に支持されるようにと、最初に建てられたのは慈愛に満ちた温かな生誕のファサード。ガウディが生きている間に建てられた部分でもある。
日本人彫刻家・外尾悦郎さんは1978年からサグラダ・ファミリアの建設に従事し、2013年からはついに主任彫刻家に。最初「1体だけでも彫らせてくれ」と頼み込んだことから始まったのだそうだ。
ベツレヘムの星の周りに集まる、羽を持たない天使たち。ガウディによるオリジナルの彫刻はスペイン内戦で壊れてしまい、この部分は外尾さんが新たに作成したものだそう(白っぽいところ?)。 だからなのか、アジアンな顔立ちの天使も混じっています。
イエスの誕生を受けて、本当に皆生き生きと楽しげで嬉しそう! この喜びを前にすると、「あなたが生まれる時にはあなたが泣き、周りの人々が笑い・・・」のことばが思い出されます。
ここにもうひとつ、外尾さんに命を吹き込まれたものが。
花や虫や小鳥で埋め尽くされた青銅(ブロンズ)の扉が生誕のファサードに入ったのは、2015年のクリスマス。
前回来たはちょうど入る前だったのか😥
美しい青みの緑に、浮き上がる薄紅色の薔薇や花々、無数の重なり合う葉・・・。
なんて美しい慈愛なのでしょうね。。。
時代とともに青銅の色が変化していく様も、まさに永遠の命を授かった生き物のよう。
後半生、私財を投げ打ちこの大聖堂建設に尽力したアントニ・ガウディ。生誕のファサードを礎(いしずえ)に、その時代時代の人々が、サグラダ・ファミリアを作り続けることに意味があると考えていたそう。
きっと今は、安心してこの地下聖堂に眠っているに違いないね😊
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