長らくお待たせしました、乳頭形成術2年間の総まとめ!
ふつうは学会とかで発表するんだろうけどね~。
患者さんに情報届かなければ意味ないんで、こちらでレビューしておきます😉
陥没乳頭の重症度(Grade)分類について
GradeⅠ: 寒さや手で触れた刺激で乳頭部が突出する
GradeⅡ: 引き出した乳頭がしばらく維持される
GradeⅢ: 乳頭が引き出せない
調査対象
2023年9月から2年間で田路執刀した105名は
☑平均年齢27歳
☑両側例:片側例≒3:1
うち2カ月以上で評価できた延べ79名(141乳頭)は
☑授乳目的の保険適応乳頭形成術
☑GradeⅡもしくはⅢ
☑他院オペ後再発し手術 4名(6乳頭)
☑田路オペ後再発し再手術 3名(5乳頭)
2023年9月からの2年間、こたろ形成皮ふ科クリニック(笹塚)にて、田路が担当した陥没乳頭の乳頭形成術症例になります。
形成外科的には傷の変化が安定する術後6カ月で評価をするのがセオリーなのだけど、あまりに
フォローアップ再診に来ない人が多い。
6カ月はおろか、2週間目の抜糸以降まったく現れない人もしばしば💦
①順調な経過で、来院そのものが大変&面倒
②再発など不満点があり、来なくなった
のどちらかのパターンかなと。。。
なので、今回は術後2カ月以上の最後の診察時の状態で、術後評価させてもらいました。
手術結果
2024年1月~2025年8月に手術した132乳頭について
Excellent 形態良好で手術痕も分からない
Good 授乳に支障ないが少しの陥凹や傷痕あり
Fair なんとか授乳可能だが形や傷に不満足
Poor 再発、平坦化

手術手技や術後管理等が安定してからの、2024年以降で集計。
2024年と2025年でも比較しましたが、時期が違っても結果にほとんど差がなく、上記の割合となっています。
結果に影響するリスクファクター
想定されるリスクファクター(喫煙歴/乳腺炎の有無/アトピー/乳房の大きさ/運動習慣/遠方からの通院)については、術前にチェック。
結果が不満足なケースや合併症が起きたケースについて、これらの要因と関連があるか調べました。
形成術というのは何度もオペをするほど条件が悪くなってくるので、基本初回手術での一発決めを心がけていますが、技術で補いきれない一番の再発リスクがこちら。
乳管そのものが低形成で短いケース
こればっかりはどうにもならんのよね・・・。
似たような陥没具合でも人によって中の状態はそれぞれで、周囲の硬い瘢痕を外したら柔軟で長さのある乳管が見つかることもあれば、乳管自体の発達が悪くほとんど長さがないことも。
術前にもある程度の推測はできますが、開けてみないと正確なところはわかりません。
十分な高さの乳頭を形成するには8~10mmの乳管が欲しいところだけど、3mm以下なんて時もある。短い場合は根元の乳腺を削り乳管基部の長さを補填したりはしますが、それでもカバーしきれないのが、”乳管の短さ” なんです。

術中に乳管の状態がどうだったかは、患者さんにもお伝えするようにしています。また、乳管が短いがための再発の場合は、もう一度手術しても同等かそれ以下になってしまうため、基本再手術をお断りしています。
一方で、合併症の起きやすいダントツの要素がこれ!
喫煙累積量(本数×年)
今までの喫煙量におおむね比例して、皮膚の血流・柔軟性・免疫力は低下します。乳頭形成術はいったん非常に血流が不安定になる手術なので、これに伴い傷がうまく癒合しなかったり、感染したり、一部死んでしまったりすることがあります。喫煙累積量は、これら合併症のリスクを最も上げるファクターです。

手術をするなら即禁煙はもちろんのこと、過去の喫煙も影響するので、できるだけ早くタバコから離れて頂くことが何より大事。もちろん赤ちゃんにとっても悪い影響しかないので、早くからやめるよう心がけてね。
乳房の大きさ(大きい方が合併症が多い)
盲点だったのがこれ、
胸が大きい人ほど合併症リスクが高い!
術後は乳頭部にかかる圧迫を極力取り除きたいのですが、バストが大きいとどれだけ工夫しても圧迫は必須。術後のみならず、半年の術後経過中も毎日圧がかかり続ける・・・ので、血流障害や再発が高めになります。
傷痕も、あとから幅が広がりやすい傾向(なので縫合の仕方も工夫しているけど)。
よくあるQ&A
痛みについて
手術は局所麻酔(注射)を乳頭周囲にしてから行います。これだけ頑張っちゃえば、あとはぐぅぐぅ寝てしまう人もいます(笑)
手術後は1時間ほどすると徐々に鈍痛が出てくるのと、寝る時にまた痛みが気になってくるので、それらのタイミングは痛み止め使うといいよ! 痛みはおおむね翌日くらいまでで、その後はさほど気にならなくなる方がほとんどです。
翌日以降のデスクワークは差し支えないのですが、腕をたくさん曲げ伸ばしする作業(物流とか ※次のQ&Aも参照)、何かがぶつかる可能性がある環境(保育とか満員電車の通勤とか)は、術後少なくとも1週間避けるのを推奨しています。
上半身の運動やストレッチについて
「乳管が短い」についで再発リスクが高いのが「上半身の運動やストレッチ」。腕を伸ばしたり回したりする際、乳腺と乳頭部が離れる方向に引っ張られるためです。

例えばテニス、ダンス、上半身の筋トレ、毎日じっくりストレッチ等。おおむね2カ月程度はお休みしてもらっています。休めない状況の時には、手術はおすすめしません。
手術後のかたちが安定するまでには厳密には半年ほどかかるので、その間好ましくない力や圧迫が加わり続けると、かたちは崩れて固まっていきます。なので、手術後はかたちを保定するためのドーナツ型のパッドもしばらくつけてもらいます。
妊活を考えている方の手術時期
妊娠してからはホルモンの影響で胸のハリや大きさが変化する(特に妊娠後期)ので、妊活より前の手術がおすすめです。妊活を急ぐ場合も、術後はせめて3カ月経つまで待って頂けたらと思います。
乳腺炎を起こしたことがある人
乳腺炎の既往がある方は、術後の感染リスクがかなり高くなります。乳頭形成術よりも、まずは感染コントロールを優先してね。また、手術で利用する組織がすでに硬くなっていることもあるので、合併症リスクも高めです。
以上、ざっとまとめた乳頭形成術2年間の所感でした。
OPE迷っている方は参考にしてね!

